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その4:楽に痰を出せる呼吸筋マッサージ法

~呼吸リハビリテーションを使って~

 疾病構造の変化や医療技術の進歩を背景に、医療機関内だけでなく、家庭や教育、福祉の場でも医療・看護を必要とする人々が急速に増加しています。それとともに、寝たきりや神経難病、嚥下性肺炎等が原因で、痰の吸引を必要とする療養者様が増加しているという現状があります。

 口の中や喉の奥に痰を溜まったままにしておくことは、非常に苦痛と不快感を生みます。更には、痰が長く肺内に溜まったままの状態が続くと、息苦しさという苦痛だけでなく呼吸困難や肺炎の原因にもなります。痰を吸引した後は、確かに呼吸は楽になり、喉の違和感や息苦しさは改善されますが、その反面、痰を出しにくい人にとって“痰を出す”という動作そのものは大変苦しいことであり、まして吸引器を使ってチューブを使い“痰を出す”ことは、常にご本人にとって大変な苦痛を強いられる現実があります。

 このような状態の方には、なるべく苦痛や疲労を最小限留めることができるよう、呼吸リハビリテーションを取り入れたマッサージや呼吸介助法を行うことをお勧めします。

 痰を出す前、あるいは吸引を行う前に呼吸リハビリテーションをすることで、痩せや廃用症候群等で低下している呼吸筋が効果的に働くようになります。その結果、胸郭や気管支、肺の柔軟性が増し、痰が出しやすい状態を作ります。そのため、苦痛なく肺や気道が刺激され、身体が本来持っている“肺や気道内の異物を体外に出そうとする働き”が増し、痰が喉の近くまで上がってくるため、楽に痰を出せるという効果があります。

 ここでは“誰でもできる”・“ラクに痰を出すことを助ける”・“本人に苦痛が少ない”呼吸筋マッサージ法をご紹介します。

痰を出す前にやってみよう!!

≪ラクに自分で痰を出すことを助ける≫ 呼吸筋マッサージ法

1.側臥位になっていただく

2.リラックスしていただく

3.手を肩甲骨~背骨に当てて、“バイバイ”の様に手を振りながら掌全体でマッサージする

1~3のマッサージ法

1~3のマッサージ法

≪ ポイント1 ≫
1)左右、片方ずつ実施しましょう。
2) 右の図の箇所を、掌を移動させながら掌を皮膚に擦り当てるように全体をマッサージすることが、筋肉を柔らかくするコツです。

4.脇の下から肩甲骨と前胸部(鎖骨下)を両手で胸を挟むように、前と後側を両手で掌全体を当てる

5.ゆっくり鼻から息を吸ってもらいます
息を吸うとき、呼吸に合わせてわきの下から両手をゆっくり頭方向へ引き上げて、肩が上がるように誘導します。

6.ゆっくり鼻から息を吐いてもらいます

7.息を吐くとき、吐く動作に合わせて両手をそのまま、足の方へ引き寄せます

4~6のマッサージ法

4~6のマッサージ法

≪ ポイント2 ≫
1)息を吸うとき、吐くときに声かけをしまししょう。声かけをすると、お互いにタイミングが取れやすくなり、ラクにできます。
2)7.の動作の際、少し肩を外側へ回すようにして行いましょう。
8.4.~6.の動作を、6~7回程度、繰り返して行います。
⇒ あとは仰向けになり、楽な姿勢をとり、ゆ~~っくり息を吸って、ため息をつくように口から「はあ~・・・。」と、長く息を吐くだけ!
吸うときは口や鼻を意識せず自然に。吐くときは軽く口を開けてため息をつくように息を吐き、これを3回程度行います。

・・・・以上の動作を、痰がからむとき、吸引を行う前にすると、次第に喉の奥がゴロゴロと痰の音が聞こえ始めて、痰が喉の奥まで上がってきます。

こうなると  ↓↓  痰を出せるチャンスです!!

(1) 咳ばらいができる人は大きな咳をしてもらいましょう。
(2) 吸引が必要な方は、できる方に吸引して痰を取っていただきましょう。

【訪問看護師からのワンポイントアドバイス】

 身体が緊張していると、呼吸筋や肺も緊張して動きが硬くなってしまいます。
ラクに痰を出せるようになるには、呼吸筋や肺がリラックスした状態でなければ最小限の動作で咳ができず、呼吸筋や肺が上手く動いてくれません。
全身の力を抜いて、緊張をほぐしリラックスできるよう、声かけも重要です。

 気道内(鼻、口、気管、気管支、細気管支、肺胞など)にある痰などを、外へ出しやすくするための方法として、
・痰を柔らかくする。
・気道内を滑らかにする。
・気管や気管支、肺胞などの壁に付着している痰を取り除く。
・体外へ誘導する。
・・・などがあります。

◆ 上記に対する具体的な対処方法として、下記のような手段もあります。

・タッピング(カッピング):肺や呼吸筋に振動を与えて痰が移動しやすくします。
※ ポイント ⇒ 痛くないよう実施することがポイントです。

・ネブライザー、蒸気吸入:痰を柔らかくして上気道へ移動しやすくします。
※ ポイント ⇒ 時々休憩を入れましょう。1回15分程度が目安です。

・体位変換:肺の中や気道にある痰が動き、喉下まで痰を上げてくれます。
※ ポイント ⇒ 背中を適度にマッサージすると、より効果的です。

・バイブレーション法:肺や呼吸筋に振動を与えて痰が移動しやすくします。
※ ポイント ⇒ 筋肉痛やだるさがでないように、また、息苦しくならないよう注意しましょう。

・水分補給・うがい:痰に水分を含ませることで柔らかくして、上気道へ移動しやすくします。

※写真及び個人情報については御家族様の許可を得て掲載しております。

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